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Lattice in the Lettuce

The monologue of a scientist.

似非科学 液体チタン

以前、オイル交換の記事を書いた時に、YellowHatで見かけた液体チタンについて、後日書く事にしてたのを忘れていたので、少々論じてみたい。

チタンの添加方法

チタンをオイルに添加する方法は3つ考えられる。

チタン単体

単体のチタンを液状化する場合、1800℃付近まで温度を上げて溶かす、またはナノ粉にして分散させる、どちらかになる。前者はオイルに入れるのは無理なので後者になるが、ナノ粉の分散は非常に難しい。そもそも、ナノ粉の形成自体が厄介だ。

破砕で作るには硬すぎて破砕機の方が壊れる。だいたいナノオーダーまで砕けない。酸化チタンであれば燃焼法で作れるが単体は無理なので、スパッタするか高温蒸気を凝縮させるか、そんなところだろう。これはとてもコストがかかり、量産でもグラム数万円オーダーになる。

一般にナノ粉の分散はビーズミルで行うが、チタンは弱い常磁性であるため二次凝集を起こしやすいものであり、余程のシェアをかけないと解砕出来ない。まずはジェットミル等で粉体のまま二次凝集を解砕する。それをいきなり油に混ぜてもクラスターの中に入らず再凝集してしまうので、適当な溶剤にビーズミルで分散し、油と溶剤置換して更にビーズ分散する。ビーズの直径はミクロンオーダー、メッシュはそれ以下になるが、そんな金属メッシュは作りようがないのでほぼ不可能。

オマケに、チタン単体はとても反応性の高い金属なので、周囲の化合物からOやNを奪ってしまう。
チタン単体をナノ粉で工業的に油に分散させるのは、現代の科学では無理だろう。

酸化チタン

ナノ粒子の形成は、燃焼法を用いて行える。二次凝集の解砕は乾式ならジェットミル、湿式ならビーズミルで行える。油への分散も難しくはない。
ただし。
酸化チタンはモース硬度が高く、エンジンオイルに入れた場合、様々な箇所を摩耗させてしまう、要するに削ってしまう。エンジンに砂利を入れたのと変わらなくなる

キレート、アルコキシド、塩

チタンアルコキシドを使って塗膜を形成する事が可能であり、耐摩耗特性が向上する場合があるが、対象はガラスであり、孤立シラノールとの反応を起こさせているものである。エンジン内面は鉄だが、単体の金属表面にそのような官能基はなく、反応しえない。

反応があるとすればアルコキシドが求核剤として鉄の金属結合を切り、溶解させてしまうケースだろうか。塩、キレートも基本的に同様だが、アルコキシドほど強い塩基でなければ単に反応しないだけか。

チタンアルコキシドのオイルへの添加については、非常に怪しい特許が出ている。
http://www.ekouhou.net/%E6%BD%A4%E6%BB%91%E5%89%A4%E4%B8%AD%E3%81%AE%E6%B7%BB%E5%8A%A0%E5%89%A4%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E3%83%81%E3%82%BF%E3%83%B3%E5%8C%96%E5%90%88%E7%89%A9%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E3%83%81%E3%82%BF%E3%83%B3%E9%8C%AF%E4%BD%93/disp-A,2013-57082.html

この特許には一切まともなメカニズムが書いていない。性能の利点があるある書かれているのだが、根拠がデタラメである。
34項において、

例えば、表面修飾されたTiO2粒子は、摩擦特性および磨耗特性を付与し得る。同様に、チタンと塩形成および/またはキレート化したトリルトリアゾールオリゴマーは、耐磨耗特性を付与し得る。同じ様式で、比較的長い鎖のアニオン性部分、またはリンもしくは他の耐磨耗要素を含有するアニオン性部分を含むチタン化合物は、そのアニオンの耐磨耗特性により、耐磨耗性能を付与し得る。

とあるが、これの怪しさは上に書いた通り。あと、アニオンの耐摩耗特性ってなんだろう?陰イオンが機械特性と何の関係があるんだろうか。まともに化学をやった人の文とは到底思えない。意味不明。


チタンの熱伝導性

チタンは熱伝導性が非常に低い金属で、仮にエンジンをチタンで作った場合、即座に焼き付いて使い物にならない。また、添加剤として使った場合にも放熱を阻害し、エンジンオイルの劣化を招くと考えられる。

といったところで終わりにしようと思っていたら、作用機構が硫化モリブデンと同様ではないか、というようなページを見つけてしまった。硫化モリブデンは六方晶でグラファイトと同じような層状構造を持ち、横滑りするため潤滑効果がある。
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/macchann/hiroshi/titan.html
あまり深く考えていなかったので、これは頭ごなしに否定出来ない。後日もう少し考えてみる。