Lattice in the Lettuce

The monologue of a scientist.

プロヴィデンスとペロブスカイト

先日ちょっと話したプロヴィデンスブレイカーについて。言葉の出展はラノベスクラップド・プリンセス」に出てくる単語である。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%82%B9

プロヴィデンスとは(神による)摂理の事で、エホバの証人あたりが「アインシュタインは神を認めた!」だの屁理屈を捏ねる元ネタでもある。摂理は科学者にとって、結果を安易に予測出来る便利なツールであるとともに、ジレンマの種でもある。

なんか実験をしたとして、目標値がXであったとする。結果は大体の場合、X±X/A、A=1〜100くらいになる。まるっきり見当違いだった場合はA=1くらいになり、概ね予想通りだとA=100に近くなる。これに当てはまらない結果が出る事は非常に稀。その場合はだいたい、実験ミスをしているケースだ。

応用研究では目標通りになることは喜ばしいが、基礎研究だと「まぁこんなものか」という、半ば諦め的なつまらなさが漂う。

Aの値が変な数値だと非常に面白いのだが、そういう事はまず起きない。これが、神の摂理プロヴィデンスである。これまでの実験結果から、たいていの事は予想出来てしまう、ある一定の範囲内に収まってしまう、何をやっても逸脱出来ない、そういう「つまらなさ」を感じる。
ちなみに、Aの値が0.1くらいだとノーベルC賞(笑)、0.01だとB賞、0.0001だとA賞になる。

プロヴィデンスを壊すことが出来ると、科学は非常に進歩する。マックス・プランクのE=hνはその一例で、ニュートン力学では説明出来ない現象を発見したのだから、そう呼べるだろう。ただ、連続した波が簡単なサイン波の合成であると発見したジョゼフ・フーリエの功績は、プロヴィデンスブレイカーではない。あくまで摂理の範囲内の事だから。

ペロブスカイト

ペロブスカイト構造とは、ある一定の結晶構造が、一定以上の温度・圧力において「くさびが外れて」、別の結晶構造に転移する構造を指す。そのときの物性変化を用いて超電導などの研究が盛んなようだが、最近では負の線膨張係数を持つ結晶について、やっと製品化が出来るレベルになってきた。

結晶構造内における原子の結合のすぐとなりに、その結合を阻害するまでは至らないが、弱くする(通常の結合距離よりも大きくする)イオンなり原子なりを置き、これが熱等の影響で励起状態になったとき、移動出来るスペースを用意しておくと、「くさび」になる。これをスイッチとして(結晶全体では)熱による線膨張をキャンセル、あるいはマイナス方向の膨張(収縮)へ持っていける、という仕組みである。

アクロバティックな手法だが、一見すると「物質はいかなる場合でもエネルギーを与えられると正の膨張をする」という観念を否定していてプロヴィデンスブレイカーに当たるようにも思える。

がしかし、ふわふわのスポンジを握りつぶして小さくしました的な話なので、そうはならない。仕組みが分かってしまうと、なーんだそういうことか、になってしまう。

プランクの式のような、「摂理の破壊」はとても難しい。