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Lattice in the Lettuce

The monologue of a scientist.

人の味覚を左右するDSC

少し前に、試してガッテンでチョコレートのテンパリングについてやっていた。

チョコレートの油脂成分であるココアバターは、パルミチン酸・ステアリン酸オレイン酸などのカルボン酸のエステルが主成分であり、これらはある一定の温度において、再結晶化する。その混合物はいくつかの結晶形を持ち、冷却速度によって違う形の結晶となり、その結晶が溶ける温度によって味覚に違いが生じる。というのが主題であった。

なるほど、言われてみればその通りだが、有機の混合物について、普通は結晶化がどうだこうだというのは、あまり考えないテーマでもある。お菓子の技術者なら当たり前のように考えるそれらは、熱可塑性樹脂を扱う人間ならともかく、エポキシだアクリルだと、架橋性樹脂を扱う人間は、あまり考えた事がなさそうだ。

さて、結晶についてその構造を問うならXRDで、ということになるが、過程を問うのならDSCの方が分かりやすい。様々な冷却速度を用いて再結晶化させたものにおいて、結晶構造と味覚の関連性は結晶構造解析でしか分からないが、結晶構造など分からずとも、再結晶化温度と味覚の関連性という視点であれば、これは熱分析の十八番となる。

と思って調べてみると、なんとリガクの測定データ集の中に、チョコレートがあった。
http://www.rigaku.co.jp/app/doc/dsc_data.pdf
これは融解温度のみで計測しているが、冷却速度を5℃/minなどでなく、もっとゆっくり、あるいは速くしてみれば(リガクのDSCはパーキンエルマーのような補償型DSCではないため急冷は困難だが)、再結晶化温度を求められるのではないだろうか。

それはともかく、リガクのデータにおいて、5℃/minの冷却速度では、元のチョコレートとは違ったものが出来上がってくることが示されている。

きっと、お菓子メーカーの研究所には、様々な分析装置が置かれているのだろう。TMAはあまり使い道が思い付かないが、少なくともDMAは弾性率測定で使うだろうし、先ほどのDSCは当然パーキンエルマーの機械があり、製造工程を考える上でTGDTAも使うだろう。

出来上がったお菓子の構造を見るのに、ミクロトームでは構造を破壊してしまいかねないから、クロスセクションポリッシャは当たり前で、ひょっとするとクライオが付いているかもしれない。それを見るSEMの方にももちろん。

などと想像すると、お菓子の技術者も面白そうである。チョコレート菓子のフラクチャとフラットなサーフェイスを見比べて真剣に議論している様など想像すると、クスッとしてしまうが。