Lattice in the Lettuce

The monologue of a scientist.

怪しさMAX量子電池 その2

以前、怪しさMAX量子電池のコメントで、もしホントに嘘偽りでなく、量子電池なるものを発売出来たのならノーベル賞級だ、と書いた。
私はさらに以前、ノーベル賞にはいくつかの級がある、という話もした。発明発見内容と、その発明が科学界や人類の文明に与える影響の度合いをクラス分けした概念だ。
例えばコンプトン、プランク、アインシュタインハイゼンベルクあたりはA級、シュレディンガーディラックフェルミ、湯川、朝永あたりがB級・・・で最近の受賞者はどれもC級・・・ノーベル賞がまだなかった時代の人物ならファラデーやマクスウェル、ニュートン、デービーは間違いなくA級、といった感じだ。
このうち、マックス・プランクはひょっとするとS級かも知れない。量子的概念自体はニュートンがずいぶん前から騒いでいたが、形あるものとして示したのはプランクが初めてである。

量子電池の中澤明ちゃんは、プランクに匹敵、またはそれ以上の科学者に違いない。ノーベル賞はもう取ったも同然だ。

この理由について説明しておこう。

まず量子電池の話から少し逸れて、電気を貯めるデバイスのメカニズムと特性の話をしよう。
電気を貯めるデバイスには、2つの代表的メカニズムがあり、それぞれが生み出す特性がある。先に特性を見てみる。

特性

・エネルギー密度 どのくらい貯められるか、一般に体積エネルギー
 密度が使われWh/Lで表す。デバイスのトータル容量を示す。

・比エネルギー 瞬間的に取り出せる電気の量、Wh/kgで表す。
 デバイスに出し入れ可能な容量、つまり放電速度・充電速度を示す。

メカニズム

・帯電によって電気自体を貯めるもの
 キャパシタと呼ぶ。コンデンサーと呼ばれる事もある。
 比エネルギーが高い。エネルギー密度が低い。
 少しの電気を一瞬で放出することで爆発的な力を発揮する。
 が、持続しない。

・化学反応によってエネルギーを貯めるもの
 電池と呼ぶ。エネルギー密度が高い、比エネルギーが低い。
 大量の電気を少しずつ放出することで、長時間の供給が可能。
 だが瞬発力に欠ける。

一般に知られる限り、この二つの特性はトレードオフであり、どっちも高いというものはほとんどない。両方の間の子でリチウムイオンキャパシタというものもあるが、工業的にはあまりパッとしない印象だ。

キャパシタに比べ電池が得意とするエネルギー密度でもっとも性能が良いのは燃料電池だ。500〜1000Wh/Lくらいある。反面、比エネルギーは強烈に低く10Wh/kg程度と瞬発力は皆無。クルマに使おうとするとここらへんがネックになってくる。
どっちも高いものはほとんどない、と書いたが、一応高いものも存在する。ラジオアイソトープ、つまり放射性物質である。エネルギー密度、比エネルギーともに、メガあるいはギガのオーダーだ。

さてここで、量子電池batteniceの話。
http://www.mjc.co.jp/product/pdf/battenice_P2s.pdf

電力密度というのはエネルギー密度の事なので、500Wh/Lであり、出力密度は比エネルギーの事なので、kgとLで単位が違うが8000Wh/Lらしい。単位がLだと空間エネルギー密度になり、電池ではあんまり使わないような気がするが、それはさておき、中澤の特許明細を見てみると
https://www.google.co.jp/patents/WO2013065093A1
PIの上に色々蒸着しているが大した厚さではないからPI自体の密度(だいたい1.5g・cm^3くらい)で換算すると、5333Wh/kgということになる。

この強烈に高い比エネルギーは、キャパシタでもかなり難しい。一般的な電気二重層キャパシタは500〜3000Wh/kg程度であり、量子電池に及ばないことになる。こんな容量はリチウムイオンキャパシタですら到達できない。さらにエネルギー密度で500Wh/Lも出せるのは燃料電池以外にはなく、どちらの値もズバ抜けて高いのだ。

電池の革命などというレベルではない。これまで長年に渡って研究されてきた、すべての電池をゴミ同然にしてしまう超発明だ。まったく凄いとしか言い様がない。EVに量子電池を装備すると、8時間かかっていた充電時間がわずか10分足らずで終わり、200kmしか走れなかったのが800kmくらいになる。
私なら特許などと悠長に構えず、速攻で会社を辞めて学会発表に行く。パテントは個人名か、自分で会社を作って単独で出す。数年後には世界中のクルマのほとんどがEVになり、自分の会社がマイクロソフトを買収しているかもしれない。

こんな革命的な発明を、ご本尊様の日本マイクロニクス・広島大・中澤チャン以外、世界中のどこも研究していないとは、まったくこの科学界には呆れる。

次は、中澤チャンのパテントをもう一度読み返して、メカニズムについて考えてみることにしよう。