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Lattice in the Lettuce

The monologue of a scientist.

お店の味のチャーハンを作るコツ

ネット見てたらこんなものを見つけた。

【ハウツー】炊飯器でつくるチャーハンがパラリとして絶品!
http://news.livedoor.com/article/detail/8676489/

実際に作ってみたが、水の加減が難しいようで、なんだか冷凍食品のチャーハンのようになる。お店の味とは程遠い。

私は自分で出来る料理の中で、チャーハンだけはだいたいお店とそっくりの味と、あのパラリとした感じのものが作れる。

ので、ちょっとその話を。

油の量

一言でいうと、家で作るものとお店で作っているものでは、油の量がぜんぜん違う。よくネットに書いてあるレシピでは大さじ1なんてなっているし、市販のチャーハンの素でもそんな記載だが、あの油の量を大さじ5くらいにすると、だいたい同じ味と見た目になる。

こんなに油入れたらベトベトになる!というくらいの量を入れる。ただそれだけ。フライパンは中華鍋じゃなくテフロンの980円のでいいし、コンロも家庭用の中火でいい。

レシピ

用意するもの
・ごはん お茶碗2杯
・たまご 1〜2個
・チャーハンの素 1袋
・油 大さじ5
これだけ。

まずフライパンに油を大さじ3入れて、次に卵を1〜2個割ってよく混ぜる。さらにご飯を入れて、フライ返しで切るように卵と馴染ませ、油でベトベトの卵かけごはんを作る。このとき、米粒が潰れるんじゃないかというくらい、フライ返しで切ると良いようだ。これは火をつけずに行う。

次に火をつけて、中火で炒める。1分くらい経ったらチャーハンの素を入れ、さらに1分後、油を大さじ2入れて1分くらい炒める。

炒め方も特段なにかするわけではなく、しゃもじでかき混ぜるだけ。

出来上がり

出来上がったものはそこらの店で出てくるのと大差ない。パラパラしていて、油っこさがちょっとあるかな?くらいの、お店の味である。
油を少なくするとベットリした家庭の味になる。ホントにそれだけの話。

チャーハンに限らず、炒めものはだいたい、油を大量に入れるとお店の味に近づく。カロリーを気にするか、味を気にするかの違いだけとよく分かる。

ちょっとうんちく

パラパラしたチャーハンが良いというのは昔から言われてるが、なぜパラパラするのかについては、とても簡単な事なのに気付かない人が多いと思う。

強火で炙られると粘り気がなくなるだの、卵で米粒がコーティングされるだの、非科学的な絵空事を真に受けてる非文明人がやたら多いのではないか。

米の主成分はデンプンであり、グルコースの重合体である。それに水を混合したものがご飯の正体だから、火で炙ったとしても、表面を炭化させるか、完全に水分を飛ばさない限り粘り気はなくならない。焼きおにぎり的にすべての米粒から水分が飛んでいたら、硬くて食えなくなる。

卵でコーティングもエセ科学。卵の主成分は水、水を除いた後に残るのはタンパク質、つまりアミノ酸の重合物だ。卵を焼いたときに固形になるのは、水分が飛んだときにアミノ酸の長鎖高分子が絡み合って、パフパフの穴あき構造(専門的に言うとポーラスな三次元骨格)を作り、そこに多少の水が入り込んだ構造になるためだ。

卵かけごはんをそのまま焼いたら、米粒同士は卵の水分が飛ぶ過程でアミノ酸高分子が絡み合い、ダマになってしまう。米粒一つ一つに違ったモーメントを与えればダマにはならないが、フライパンとヘラでそんな高度な事は出来ない。

油を一切使わず、卵とご飯のみ、ご飯のみで炒めてパラパラした状態になるわけがない。なったとしたら、それは水分が完全に飛んだ状態で、硬くてとても食えたものではない。

食用油は脂肪族カルボン酸のトリアシルグリセロールであり、重合した高分子ではないから絡み合いの度合いは低く、固形にはならない。またトリアシルグリセロールはエマルションを形成することから分かるように両親媒性であり、ご飯の表面によく馴染む。このメカニズムによって、グルコース重合体の水混合物であるご飯粒に潤滑性を与えたものがチャーハンの正体である。

結局のところ、高温でもあまり揮発せず、なおかつご飯のタンパク質にへばりつき、潤滑効果を与える油の存在なくしては、パラリとしたお店のチャーハンは作れないのだ。