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Lattice in the Lettuce

The monologue of a scientist.

物を叩くとなぜ発熱するのか

寒くなってきたので、電気毛布を出してきて使っている。暖かいなぁと思いながら、ふと、熱伝導についてまた考えこんでしまった。

電気毛布の発熱には2通りある。1つは熱放射、つまり赤外線領域の電磁波による放射である。これについては置いておく。
もう1つは接触による伝搬、熱伝導だ。熱伝導は前にも述べたように、隣り合う原子間でフォノンの受け渡しが行われてエネルギーが伝わっていく。

さてここでもう少し深く考えてみた。

熱伝導のおさらい

フォノンというのは準粒子であって、仮定した方が便利だから仮定しているだけの存在である。本当にエネルギーを受渡しているのは原子の振動だ。
原子がどのように振動するのか考えてみる。

まず、最外殻の電子の軌道が変化する。このとき斥力が働くが、斥力は軌道を元に戻そうとする力のため、逆ベクトルを持つ。そのため、力は低い方へ流れようとし、入力と反対側への斥力として働く。斥力はさらに内殻の電子の軌道を変えるか、あるいは別の原子の分子軌道を変えて進み、その連鎖によってエネルギーが伝搬していく。

これが熱伝導の基本的な考え方だ。

非常に大きなエネルギーが一点集中で入力された場合は、電子の軌道変化の復元力だけでは処理しきれず、電磁的な力によって原子核の位置が変わってしまい、様々なエネルギー準位の分子軌道が変化するために結合が解除され、それによって構造破壊を招く。

ちなみにその時のエネルギー量は連続的な変化を与えたとすると降伏点が存在することになり、レオロジー概念が適用出来るようになる。

一点ではなく面で入力された場合には、その力の持続性がどのようなものであるかによって分かれ、平均的な持続性を持つ場合は系全体の運動に繋がり、周期的な場合はやはり構造破壊へと至る。

発熱とは

その件は置いといて、熱伝導ではなく、発熱現象についても考えてみたい。

ジュール熱は導体中の自由電子の運動によるものなので違うが、化学の発熱反応にせよ衝撃での発熱にせよ仕組みは一緒で、熱伝導の考え方との接点が大きい。
ここではエネルギー源を簡単に考えるために、物を叩いた場合、と置く。
ハンマーで鉄をガンガン叩いたらだんだん熱くなってくるが、あの発熱とは一体なんなのだろうか。

ハンマーで与えられる衝撃の周波数は、そんなに高くはない。具体的に何ヘルツなのかはちょっと分からないけれど、少なくとも熱フォノンの周波数のようにテラヘルツオーダーではない。
波は合成されて振幅は変化したとしても周波数は変わらないので、衝撃波がどうして熱に変換されるのかは、波だけを考えていても分からない。

ヒントは、先ほどの熱伝導の仕組みにある。

衝撃によって最外殻電子の分子軌道が変化すると、斥力が働く。この斥力は電子の軌道が元に戻ろうとする力によって起きてはいるものの、戻ろうとする力が、「実際戻る速度」を調整する事は出来ない。そのため、分子軌道が元に戻る速度は、分子軌道が持つエネルギー準位に比例したものとなる。

変位を与えたときの速度(衝撃の周波数)は低くとも、戻ろうとする速度(分子軌道のエネルギー準位に比例)は非常に高いため、周波数の変換が起きる事になる。

弓で矢を射るときの原理と同じだ。ギリギリギリ・・・と引っ張っているときの速度は非常にゆっくりだが、撃ち出される矢は遥かに速い。弓の場合は張力によりけり、電子は分子軌道のエネルギー準位によりけりというわけ。

衝撃が非常に短時間(たとえばフェムトセコンドオーダー以下)で行われれば、多くのエネルギーが熱への変換に使われるだろう。実際の衝撃はミリセコンドオーダーのため、電子の動きからみればゆっくりとした、平均的かつ持続的な変位となり、緩和時間の長さによって系全体の原子核の移動を伴い、運動のまま伝搬される。熱へも当然変換されるが、一部となる。

終わりに

もし、ダイヤモンドよりも遥かに硬く絶対壊れないものがあったとする。その物に、それと同質の物を光速でぶち当てたのなら、そのエネルギーはすべて熱へと変換されるだろう。