Lattice in the Lettuce

The monologue of a scientist.

ガラスが固体?

http://www.zaikei.co.jp/sp/article/20150125/232354.html

Mutual information reveals multiple structural relaxation mechanisms in a model glass former

京大の研究グループが、とか言ってるが、これはブリストル大のダンリービーとウェスナーたちのグループ、と言ったほうが良いと思う。ほとんど英国主体で進められた研究である。山本さんはOCTAに絡んでるのに、OCTAの文字は微塵も出てこない。

アモルファスのSiOの構造緩和を全原子MDとスパコンで延々計算して、クラスター的に大きな近似可能な結晶構造を見い出した、それは系のエネルギー状態に比例する結晶相と非晶相の相分離状態だった・・・というような内容。ダンリービーさんはガラス転移温度に関係したシミュレーションもやってたような気がする。
山本さんは計算化学会かなんかで会ったような気がする。OCTAではKAPSELに関わっていたはず。どうせそのうちJSOLかアクセルリスあたりのセミナーかなんかで発表するだろうから、詳しく聞いてきたい。

その件はちょっと置いといて。

さてそれはいいとして、この研究は、非ニュートン流体の粘度をMDで求めようとすると、粗視化しようがスパコン使おうが、まだまだガラス状態での粘度くらいしか求められない、というジレンマに端を発しているような気がする。MDでの粘度シミュレーションは、ニュートン流体を除けばまだまだ未熟なもので、NVE緩和を例にしても、普通はナノセコンドオーダー、良くてミリセカンドが限界。この単位では、回転粘度計がミリパスカルを示すような系でも、ガラス状態の非常に弾性率の高い状態での粘度しか求められない。

ならば、その程度でも可能な研究を・・・と考えていくと、こういったガラスの中に結晶構造が存在するのかどうか、といったものはベストマッチすると思う。

私のHNになっているLatticeは結晶格子を指している、というのは置いといて、結晶は系のエネルギーがもっとも小さい安定した状態にあるときに、原子配列が規則的になっているものを指す。

規則的になっていれば、与えられた外力への応答(応力)は均一性を持ち、格子の数だけ足し算的にアウトプットは増大し、人間が検知出来る程度の大きさに成長できる。破壊しない程度の大きさであれば、外力への応答が均一に見られるということは、系がコレ以上変形出来ない事を示しており、それをもって固体と呼ぶことが出来る。

しかし結晶になっていない構造は、一見安定状態に見えたとしても外力または応力によって容易く揺れ動く可能性を秘めており、固体と呼ぶには相応しくない。物質系には、相転移時の急激なエネルギーの出し入れ現象を以って区別可能な三態が知られているため、固体ではないというなら液体、しかし普通液体として知られるものとは見た感じが違うので、特殊な液体、ガラス状態、という言葉がある。

ただしガラス状態というのは、有意の系がそうなっているというだけで、その外側やさらに大きな系のすべてがガラス化していなくとも良いし、逆に小さな系で見た時には結晶化していても構わない。アモルファスのバルクには結晶化している部分としていない部分が混在「可能」だし、アモルファス=非結晶であると論じるのは早計だと思う。

ガラスの中に結晶がある・・・とか言うと、エネルギー論的に理解してない人(大多数の化学の技術者もそうだ)は、お前アホちゃうんか?ちゃんと勉強したのか?ガラスってゆーのは結晶じゃないやつをゆーんだぞ?とか言ってくる。クラスターやミセルベシクル絡み合いレオロジー云々も同く、現実の現象にからめて説明しようとすると、無知呼ばわりされる事が多い。

結晶は、物体の端から端までぜーんぶ同じ格子になってる必要はなく、無造作に取り出した有意のサイズの系に、近似可能な繰り返し構造が見られる場合にも成立可能だ、という観念がこの研究のバックボーンに存在する。

残念ながらこの研究はシミュレーション上でのものなので、統計力学バカがよくやる「じゃあ実験ではどーなん?実験とあってんにょ?あーん?」で覆される。おかげで計算バカは部屋の隅っこで膝を抱えてないといけなかった。もうすぐ、そういう事もなくなると思う。