Lattice in the Lettuce

The monologue of a scientist.

エポキシの当量 2

以前、エポキシ樹脂の当量について少々論じた。
http://d.hatena.ne.jp/lettuce_chan/20150305/

別にエポキシ樹脂に限った事ではないが、一般的に、反応性基を持つ機能性モノマー〜オリゴマーは、まったく別に用意された樹脂骨格の末端(例えばOH)をエポキシド等に変性する事で完成される。このとき、置換えによってエポキシ化する手法が一般的で、それにはエピクロルヒドリン(ECH)と呼ばれるものが使われる。

ECHは酸化プロピレンのメチル基を塩化アルキルにしたもので、塩素の高い反応性をエポキシ化に用いれるようにしたもの。これを用いて他の分子(例えばビスフェノール等)をエポキシ化した場合、反応の諸条件で副反応の率が変わり、エポキシ化されたものの割合が変わってくる。それがエポキシ当量に影響を与える・・・というのが、以前書いた内容だ。

高純度化

さて反応の諸条件と書いたが、これは結構微妙なもので、季節によって(温度湿度コントロールされた部屋で合成しているはずなのに)変わったり、原料の(ECHやビスフェノール等)品質によっても変わってくる。一様に同じ当量になるように作るのは非常に大変というか至難の技で、工程表に書けない部分は技術者の練度次第。

職人芸時代はいざ知らず、今時誰それが居ないと作れねぇとか抜かしてたら仕事にならないので、当然、出来上がったモノを一定の規格内に修正する技術も存在する。

一つは、脱塩化水素反応に代表される化学的手法だ。出来上がったエポキシを適当な溶媒に溶かし、水酸化ナトリウム(+水)を加え、塩素を塩化ナトリウムとして分離する。これは樹脂を「洗ってる」感じに近く、手間はかかるが収率が良い。ただ、反応時にエポキシ樹脂の重合も起きてしまうため粘度が上がったりする。

もう一つよくあるのが、分子蒸留という物理手法。通常の蒸留との違いは真空中で行うかどうかで、蒸気圧が低い状態のため分子の密度が低く、温度を細かく設定することで精度の高い蒸留が出来る、というもの。塩素が残っている分子は重いので、蒸留によって高純度化が期待できる。これは樹脂を「分級している」事になるので、時間がかかり収率も低い。

一般的にはこの2つの手法を組み合わせて、目的の当量範囲になるように調整される。土木用のエポキシのように純度などどうでもいい、といったものでは大量に塩素が残っている低純度のものも製品としてあるが、一般用のエポキシはある程度調整される。

当量以外の面で、塩素が残ってると困るもの(環境面や、アプリケーションの用途面、特に電材関係)ではさらなる高純度が求められ、徹底的に高純度化処理を行った超高純度エポキシ、というのも一部ではあるがラインナップされる。

酸化法によるエポキシ化

この、超高純度エポキシは、最初に述べたECHを使う合成方法(エピクロ法)以外に、ECHを使わず過酸化物を用いて直接エチレンオキシドを得てしまう、というものもある。
http://www.google.com/patents/WO2012018114A1?cl=ja

参考URLのナガセの他に、昭和電工(昭和高分子)などもこの方式のエポキシ樹脂を作っている。エピクロ法に比べて、原理的にはクロルがまったく入らないモノを作れるため、理論当量に近いものを合成出来る。が、過酸化物というのは「危ない」物のため、危険性を考慮すると一部の企業しか行えなくなる。

酸化法のメリットは他にもある。
エポキシ化する元の骨格が熱に弱い物だった場合、分子蒸留等で骨格が壊れてしまうものもあるが、酸化法を用いれば、そういった特殊な樹脂でも純度の高いものを生成可能だ。骨格中にフェノールやナフタレン等のベンゼン環を含むものは、だいたい耐熱性を持っているが、そうでない(つまり脂肪族等の)骨格は熱に対して脆弱だ。

近年のエポキシ樹脂の特許には、酸化法を用いた特殊なエポキシを並べたものが散見される。