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Lattice in the Lettuce

The monologue of a scientist.

北朝鮮の水爆実験は失敗ではないか?

科学 社会

本日午前、北朝鮮が水爆実験をやったそうだ。昼のニュースで「水爆実験だった」と報じられたが、もし水爆であるなら威力があまりにも小さすぎる。北朝鮮は成功と謳っているが、これは、失敗したと見て間違いないだろう。

核実験装置について

よく知られるテラー・ウラム型の熱核兵器は、プライマリーの原爆がまず爆発し、そのエネルギーによってセカンダリーの核融合燃料(三重水素トリチウム)を核融合させる方式である。この構造を最初に作り出したアメリカは、アイビー作戦のマイク実験にて史上初の核融合爆発を実現した。
それ以前にも「核融合がほんとに起きるのかどうか?」という目的で、グリーンハウス作戦ジョージ実験で、原爆に核融合燃料を混ぜ込んだ物を使っているが、こちらは核分裂の反応を補強した程度の物で、いわゆる水爆というのとはかなり違う。

さて問題は、マイク実験の規模である。俗に10MTクラスと言われているが、正直どれくらいの量をどう使えば、どの程度の威力になるのか、アメリカもよくわからなかった。その事は、後に第五福竜丸が被爆したブラボー実験でも明らかである。

水爆は、何をどう使っても規模がバカデカくなってしまう。原爆もそうだが、核実験装置・核兵器というのは、そのサイズも威力も小さい物を作る事が困難なシロモノである。
原爆はウランプルトニウムの臨界量を超える事が条件になり、アメリカやロシア以外は、ヒロシマサイズ以下の物を作れないと思われる。水爆も同様に、トリチウムの量が一定範囲にないと効率が落ちるし、少なすぎると爆発的反応が起きずプライマリーによって吹き飛ばされて終わる。

北朝鮮の人工地震

以前の北朝鮮の核実験における地震マグニチュードは、2006年の時に気象庁測定でM4.9、2009年で5.3、2013年のアメリカ測定で5.1であり、いずれの実験でもヒロシマサイズの15kt程度ではないか?という話が通説だ。

今回もマグニチュードは5程度。マグニチュード地震規模数値であり深さによる減衰は考慮されているため、本当に爆発の威力がその程度だった、と示しているのだから、出ている報道内容をすべて信じる(北朝鮮のニュースも)のであれば、北朝鮮が水爆で15kt程度の物を作った、という事になる。

小さな水爆は作れない

15ktの水爆はありえない。水爆は最低でもその50倍程度の威力になってしまう。アメリカですら、そんな小さな水爆は作っていない。
原爆なら、ウランプルトニウム以外の核種を使って(コスト度外視の国家予算まるごと投入レベルで)、TNT換算10kg程度の原爆を作る事は可能だ、が、水爆は無理だ。

となると、今回の北朝鮮の実験装置は、核融合爆発実験装置であったとしても、プライマリーの爆発だけでセカンダリーは爆発せず吹き飛んでしまった、いわゆる失敗と考えるのが妥当だろう。

アメリカも、ブラボー実験と同じシリーズのキャッスル作戦クーン実験では、小型の(といっても狙いは1MTだったが)水爆を模索したが失敗している。その後も何度か、小型化で失敗を繰り返した。

北朝鮮の技術レベルはどの程度か?

私見だが、今回の実験は、ナガサキサイズのプルトニウム原爆(ファットマンのコア)をプライマリーにして(これは今まで何度か作ったので実績があるのだろう)、セカンダリーを追加して水爆に出来ないかなぁ?程度の実験だったのではないだろうか。

ファットマンはインプロージョン型原爆で、これはトリニティ実験と同様に32分割の爆縮レンズを使っていた。アメリカが初期のテラー・ウラムで用いたプライマリーの核出力は、200〜300ktくらいと言われる。実はこのクラスのサイズを32分割で作る事は不可能で、96分割あるいは288分割程度にしないと、中心部に圧縮される衝撃波がキレイな球形を成さない。
分割数を高める事の困難さは点火タイミング云々ではなく、爆薬の成形技術と、爆速のコントロールにある。北朝鮮は、ここらへんの技術を恐らく持っていないだろう。

だから、旧ソ連から供与されたファットマンモドキの設計図を未だに使っているのだろう。と予測する。