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Lattice in the Lettuce

The monologue of a scientist.

鴻海がシャープを欲しがる本当の理由

掲題件についてググって調べてみた、が、どれも憶測や空想ばかりで、そのものズバリといった記事がない。そこで、少々この件を明らかにしてみたいと思う。

通説について

鴻海はEMS(製造受託企業)として名高い。特にiPhoneの製造を一手に引き受ける企業として有名である。そこで、「なるほど鴻海はシャープの液晶が欲しいんだな」とか納得してしまう人が多い。
が、シャープが作れる液晶(ジャパンディスプレイを含め日本が作れる物と言っても良い)は時代遅れの物で、サムスンやLG製に性能もコストパフォーマンスもまったく及ばないというのが通説である。

そこで最近は、有機EL(AMOLED)に注目する記事が増えた。シャープはLTPS(低温ポリシリコン)の量産技術において世界ナンバーワンであるという。ところがどっこい、サムスンやLGはLTPO(LTPSとIGZOのニコイチ)技術を持っており、Appleもこちらに注力しているためシャープのLTPSは置き去りにされる可能性が高い。

正直鴻海にとって、シャープごとき時代遅れメーカーの液晶も有機ELも大した魅力ではないだろう。鴻海がシャープを欲しがる理由、シャープが持つ、世界に誇れる技術はもっと別のところにある。

ソニー製のカメラ?

まず少々脱線した話をする。iPhoneにはソニー製のCMOSが搭載されているというのは有名な話だ。この話で多くの人は「なーるほどiPhoneのカメラはソニー製なんだ」とか思い込んでしまう。これは大きな間違いだ。

マクドナルドのフライドポテトは、マクドナルドが作った物だが、じゃがいもや油はマクドナルド製ではない。これと同じ事がカメラにも言える。CMOSは、そのままスマホに実装することは出来ない。

実装技術

ソニーが製造するCMOSというのは、あくまでウェハに回路実装して切り出したチップそのものだ。このチップに反射防止膜やマイクロレンズを形成し、専用の基板に取り付け、強度を高めるために樹脂を注入し、フィルタガラスを実装し、レンズと駆動系を搭載し、駆動系の回路を実装し、ガワを取り付け焦点距離の初期値を設定し、初めてカメラの部品として完成する。

このチップ切り出し以降の工程は、ソニーとは関係ない他の企業が行っている。取り付けている基板やフィルタやレンズも、まったく関係ない企業が作っている(例えばレンズはミツミ製で、さらにその材料は東亞合成あたりが作っている)。

ここではCMOSモジュールの製造について紹介したが、他の様々なセンサー類も同様の手法でモジュール化されている。モジュール化工程のうち、専用の基板に取り付ける工程を一次実装と呼ぶ(プリント配線基板にはその専用基板を取り付けており、二次実装と呼ぶ)が、このLSIバイス製造技術のトップシェアを誇るのが、ルネサスとシャープである。

買収で鴻海が得る物

いわゆる回路形成やエッチングといった半導体プロセスは、半導体製品を製造する根幹的な技術ではあるものの、半導体製品自体を作る技術ではない。実装技術をもってして初めて、半導体モジュールとして完成品に実装可能な物となる。

これまで鴻海は、モジュール化された半導体製品を買ってきてiPhoneに組み込んでいた。しかし今後は、ベアチップを仕入れてきて、"自社"でモジュール化して組み込む、あるいは他社にモジュールを供給する事の出来る企業へと発展する。

鴻海が本当に欲しがっている技術は、シャープの持つ半導体実装技術である。