Lattice in the Lettuce

The monologue of a scientist.

QNAP TVS-472XTのCPUをCore i7 9700Tに換装してみた

6コア12スレッドのCore i7 8700Tでは国内に動作報告があるが、よりコア数の多い9700T(というより9世代Core)は海外フォーラムでも出ていなかったので、参考になるかと考えてここに書いてみる。9900Kは恐らく電源の問題だと思うがブート中にフリーズした。

起動速度や転送速度が大して変わらない事は知っていたため、アプリケーションの方で試してみた。
デジカメ画像40万ファイル、動画1万ファイルに対し、Index・サムネイル処理・顔・物体認識させてみたが、わずが2日足らずで終了した。TS-653Dでは1週間程度、DS918+では1ヶ月以上掛かる処理である。

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現在はVMでWindows10とAndroid9を動かしている。

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Amazonフォトを8スレッドで動作させてみたが、VMのCPUロード50%に対して物理CPUは30%程度と、余裕のある動作となっている。
CDMでのベンチマークはあまりアテになるものではないが一応載せる。

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構成は次の通り。
4TB SSD (WD Red SA500 NAS SATA WDS400T1R0A) x3 RAID0 静的ボリューム
12TB HDD (WD120EMFZ-11A6JA0) x1 シンボリューム
480GB SSD (CT500P1SSD8) x2 RAID1 RWキャッシュ
10GbE Single MTU1500

メインボリュームはRAID0のSSDとしている。TBWが高い製品ということもあり、RAID0でもさほど問題にならないと思う。
HDDはHBS3にて定期バックアップにのみ使用。このHDDはWD Elementsの殻割りおみくじ。PCで使うには色々問題もあるがNASでは無問題。回転数が低いためバックアップにはもってこいで、7200rpmのものより圧倒的に静かだ。殻割りせずUSBのまま外付けにしたほうが色々便利だったかもしれない。夏場の熱問題は、さすがにNAS内の方が安心ということで、こんな形にしてみた。

キャッシュSSDは当初RWのRAID0にしてみたもののイマイチ速度が上がらず、試しにRAID1にしたところ劇的に良くなった。理由は不明。RAID0はNVMeに向かないのかもしれない。
10GbEはTP-LINKの8ポートアンマネ10GbEハブTL-SX1008を中継として、延長30mほど引き回している。MTUをJFせず1500にしているのはルータが非対応なためだが、少なくともシーケンシャルライトはサチっており、JFにしてもさほど大きくは変わらないだろう。

ニュートラルにすると燃費良くなるのは当たり前

ベストカーWebの馬鹿記者が書いた記事。
bestcarweb.jp

いわく、

アクセル全閉の時は、燃料を噴射しない燃料カット、ハイブリッド車や電気自動車なら回生制動となる。それゆえ、エネルギー消費ゼロなので燃費/電費はマックス状態となる。

クルマのことをちょっとでも知っていたら、こんなのオカシイとすぐに気付くだろう。

ガソリン車でニュートラルにせずアクセル全閉したらエンブレがかかる。ハイブリッド車アイドリングストップに入る(パラレルハイブリッドの場合エンジンは切り離されており実質的にニュートラル状態になっている)が、回生制動で回収出来るエネルギーはごくわずかだ。

エネルギー消費はゼロ?とんでもない。クルマの運動エネルギー(慣性運動エネルギー)をどんどん消費しまくっている真っ最中だ。
ニュートラルにして空転させた方が慣性運動エネルギーの消費は少なくて済むので、当然燃費は良くなる。
エンジンやモーターのエネルギー効率が100%、さらにタイヤや車輪のエネルギーロスが0%、ついでに機械的ロスが0%にならない限り、つまり第二種永久機関でない限り、加速させるのに必要なエネルギーと同等には絶対になりえない。

空転させることで運動エネルギー消費効率を上げるのは、新幹線などの電車もよくやっている。一定速度まで加速したら、モーターを空転させて回生ブレーキ発生を止めている。

こんな中学生レベルの物理すら分からない馬鹿が記者やって、物理学に大いに反する嘘記事書いてドヤってるとか笑わせる。記者辞めて中学校に入り直せと言いたい。

踏み間違い事故の原因は運転教則本にあるのではないか?

www.avoc.com

少し前から頻発している、踏み間違い事故の原因について考えていて、ふと思い当たる事があって探した記事。

思い当たる事というのは、「かかとを床に付けずにブレーキングする」と教習所で教わった事。
いくら老人でも、運転慣れしている人が踏み間違いなどありえるだろうか?と思案していた。普段自分は、かかとを床に付けたまま踏み変えをしている。だから、つま先を右に振ったらアクセルで、左に振ったらブレーキと、体が憶えている。急ブレーキ踏むときにしても、かかとは付けたままで足首を左に捻る。この動作を誤るということは、どうやっても考えにくい。

ところがだ。教習所、というか運転教則本に書かれているように、かかとを床から離して踏み変えようとすると、「ブレーキペダルの絶対位置を体が記憶していない限り」踏み間違える可能性は出てくる。

かかとを床に付けていると、かかととの相対位置で、アクセルがどこにあるか、ブレーキがどこにあるか、感覚的に分かる。しかし、かかとを離してしまったら、ブレーキがどこにあるかなんて目で見ないと正確には分からない。ブレーキだと思って思いっきりアクセルを踏むことは、老人に限らず若い人にも起こり得る事になるし、感覚が鈍っている老人なら尚更だろう。

リンク先サイトにも書かれている通り、

運転教則本ではかかとを離して踏み替えるよう指導されていますが、これは教本の普通免許対象が乗用車に限らずマイクロバスから軽トラック、小型特殊までを対象にしていて、床からペダルが生えているような種類のものでも通用する非常に普遍的なペダルの踏み方を念頭に入れているためだと思います。教本が常に正しくて最適ということにはなりません。

老人に事故を起こさせている原因は、運転教則本ではないだろうか?

Pixel4で星空を撮ってみた

話題のPixel4で星空を撮ってみた。ダムの湖畔で1000円ちょっとの自立自撮り棒で地面に立てて撮影。正直まったく期待してなかったのに、これほど撮れるとは驚き。
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撮影中の画面はこんなふうになる。
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この星空モード(天体撮影モード)だが、設定の仕方が少々やりにくい。まず夜景モードに入って、星空に向けてしばらく待つ。すると、「天体撮影モードON」とかいう小さな表示が出てくるので、この表示が出ている間に撮影すると星空モードでの撮影になる。
iPhone11の夜景モードと同じように「カメラが認識しないと設定出来ない」ため、結構めんどくさい。UIの改善の余地ありだろう。

それと、Pixel4はPixel3にあったGoogleフォトの無圧縮無料がなくなったため、2.4MBある元ファイルが700kb程度まで圧縮されてしまい、こうしたグラデーションの密な画像は階調情報が失われやすいようだ。今回の写真はいずれも、Dropbox経由で元ファイルのまま取り出している。

iPhoneはなぜ重く感じるのか?比重との関係

今のiPhone(iPhoneX以降)は、なぜか重く感じる。対して、OPPOとかUMIDIGIとかXiaomiとか(私はHUAWEI買った事ないから知らないが恐らくHUAWEIも)の中華スマホはさほど重く感じない。もちろん実重量は中華スマホの方が重い。

これはどうしてなのか?簡単に言うとiPhoneは比重が大きいので重く感じるのだ。

比重というのは体積あたりの重さの事で、よくある測定方法は空気中と水中での重さの違いを用いる(アルキメデス法、水に対する比重)。この値が大きいほど、人間は重いと認識する。
手の負担、特に指の負担は、手に持った物が触れる面積あたりの荷重で変わってくる。同じ重さでも、触れる面積が少なければ、それだけその部分に掛かる重さは増え、負荷は増大する。

結局のところ、iPhoneが重く感じるのはSUSなんか使って無駄に強度を上げている事によって、比重が大きくなっている事が挙げられる。ホモCEOがケツに突っ込むために強度上げてるのか知らないが、あの重量感はハンパではない。

Low-k, Low-Df 低誘電正接エポキシというギャグ

化学界(工業界)には、時折、なんだこれはと首を傾げたくなる製品(材料・薬品)がある。最近流行ってる低誘電エポキシというのも、はっきりいってギャグである。

背景

5G/IoTや車載レーダー用途で、昨今Low-k(低誘電率・低誘電正接、Low-Dk,・Low-Df)が度々語られるようになった。誘電という言葉は絶縁の類語で、ようはこの値が低くないと短絡したり発熱したりといった問題が生じる。材料技術的に難しいのはLow-Df、低誘電正接の方で、これは高周波においては発熱問題、エネルギーロス問題に結びつく。

5Gスマートフォンは現在NSA構成のサブ6(6GHz以下で4Gと兼用)で暫定的に運用が開始されたばかり。サブ6においてLow-Dfはさほど重視されておらず、既存のあまりDfの低くない材料を用いて作られている。あまり影響はない、と考えても良いが、一部報道で5Gスマホは巨大になってしまう事が取り上げられて居る通り、サブ6でもエネルギーロスは確実に存在し、これがLow-Df材料の不在によるものというのは想像に難くない。

なぜ難しいか

原材料をLow-Dk(低誘電率、低ε)に振るためのセオリーは確立されており、例えばクラウジウス・モソッティの原理などという原子団寄与法の経験式などもあったりするし、有機材料は一般的にLow-Dk/High-Dfなので、Low-Dkに関して悩む研究者はほとんど居ない。一方でLow-Dfは、メカニズムこそ分かっているものの式など存在しないし、研究者は経験とカンでなんとなーく仕事をしている。
カニズムとしては、誘電率εは電子の振動によるエネルギーロスなので、電子の振動に対し原子核が柔軟に対応出来るか、もしくは電子が振動しづらければ、下げる事が出来る。誘電正接tanδは分子鎖の振動によるロスで、電子が振動しても分子鎖が振動しないか、もしくは電子が振動しづらければ、下げることが出来る。

一般にセラミックスはHigh-Dk, Low-Df、有機材料はLow-Dk, High-Dfである。また、電子が振動する原因は電子の偏り(分極)にあるので、分極率を下げればどっちも下がる。分極率が低い材料として有名なのがPTFE(ポリテトラフルオロエチレン、いわゆるテフロン)だ。フッ素樹脂にはPTFE以外にも、PVF、FEP、ETFE、PVDFなどあるが、このうちPVDFだけは分極率が高くてHigh-Dk、High-Dfである。

余談だがPTFEは樹脂としては強烈に使いにくい。接触角が高く濡れにくいし、温度を上げても融解せずいきなり分解する。加工性が良くないので電線の被覆やら層間絶縁膜くらいしか使えない。

さて、今のところ、どこの企業でも大学でもLow-k材料はこのセオリー「分極率を下げる」ということを念頭に研究している。この分極率というのが本日のお題である。

低誘電正接エポキシはギャグでしかない

エポキシ樹脂というのは、エチレンオキシドをβ炭素アダクトの末端基として持つモノマー、オリゴマーの総称である。一般的な特徴としては、適度な反応性と反応コントロールのしやすさ、反応後には接着性を出しやすい、耐熱性に優れるといったものがあり、工業用途で大量に使われている。土木建築用途の接着剤やら、航空機の羽根、風力発電の羽根など。また高純度のものは電子基板や、半導体の封止材料としてもよく使われる。現代の回路基板の大半は、エポキシ樹脂をガラスシートに含浸させたものが用いられている。

さて、問題はこの「反応後に接着性を発現しやすい」といった点。これは水素結合によって発現している。エポキシ基の三員環を求電子剤でα炭素を攻撃して開環すると、プロトンが酸素に移動して水酸基に変わる。この水酸基が接着性発現に多大な貢献をしているのだが、水酸基OHというのは分極率がやたら高い特性基の代表格で、低誘電化でもっとも嫌われるものである。先のクラウジウス・モソッティ式でもOHは相当な悪者として示されている。

エポキシ反応において求電子剤の代表格は、これまた「硬化剤の代表格」の1級や2級のアミンであり、要はエポキシの特徴の一つが水酸基OHの発生しやすさにあると言って過言ではない。Low-Df化、低誘電正接化においてエポキシを使うということ自体、本末転倒なのだ。

技術的な対処

一般的に、「エポキシ樹脂の良さ」を全面に押し出した研究開発をする場合、硬化剤としてアミンは避けられず、水酸基がたくさん出る。技術的な対処としては、求電子剤でなく求核剤を使って開環させるというものがあり、これをすると分子鎖内でプロトンが足りなくなるため酸素はアニオンのまま残る。このアニオンの連鎖反応であれば水酸基は出てこないから、誘電率・誘電正接は上がりにくい。エポキシにおける求核性反応の代表格としてカルボン酸無水物(俗に言う酸無水物)がある。

ならそれでイイじゃん、ということにはならない。酸無水硬化の弱点は前述の通り水酸基が生じないため接着性があまり上がらないことだ。また、多くのアミン硬化と異なり架橋点の間の距離が増えやすいため架橋率も上がりにくくなり、耐熱性も良くはならない。エポキシ樹脂の良い点をかなり潰している。

組成物の世界では接着性を上げるためによく用いるのがシランカップリング剤だが、シランはそもそも分極率が高いので、これも実は避けたい。まったく、産業的化学界において材料の水酸基を潰さないといけないという事は、かなり特性を悪化させることに他ならないのが痛いほどよく分かる。

代替はないのか

特性悪化が目に見えているエポキシをそれでもなお使わなければならない理由は簡単で、他に良いものがないからだ。
単に樹脂としては先程挙げたPTFEがあるし、PPE(ポリフェニレンエーテル)というのもよく使われるし、最近では低誘電基板向けでLCP(液晶ポリマー)も使われ始めた。ただ、これらの多くは熱可塑性樹脂に分類されるもので、エポキシやアクリレートのような熱硬化性樹脂とは異なり可用域における粘度が高いため、ハンドリング(工程力)は低く生産性が良いとは言えない。

結局のところ、エポキシが良くないというのはすべての技術者・研究者が理解している。しかし今のところ代替がない。供給側の材料メーカーも、使用者側のメーカーも、こんなもん使えるかよ・・とか思いながら作って使っているのが現状である。

煙幕特許とは

煙幕特許というものがある。ググってもなぜかさっぱり出てこない。なので解説しておこうと思う。

特許は、発明そのものを登録申請するわけではなく、発明にまつわる思想を登録するものである。これは私の言葉ではなく、特許法第二条第一項に述べられている事だ。
技術的思想と呼んだりもするが、この思想というのが曲者で、今後取ろうとする特許の障害にならない程度に、権利範囲をなるべく広く・深くという発想に結びつく。
それ自体は別に問題ないことだが、これは表の世界の話。

煙幕特許とは、裏の世界の特許だ。

新ビジネスと特許

例えば強電関連のメーカーの研究者が、半導体関係の研究をやって特許申請する事になったとする。大手企業ではこんなのはザラにある。
しかし往々にして、モノ(商品)になるようなレベルに仕上げていくには時間も掛かるし、会社として大々的に「強電やめて半導体やりまーす」などとは言い難い。
特許が公開公報になれば、その会社が「今後半導体やるぞ」ということが世間に知られてしまって色々と面倒くさい事になりかねない。

そこでどうするかというと、その半導体関係の特許を出すのと同時に、まったく嘘っぱちのデタラメな内容の特許を多数出して煙幕として使う、という方法が取られる。
弱電関係の基板やら配線やら、インバーターの構造やら何やら、一切研究も開発もせずテキトーな明細書をパクってきてテキトーに書き換えたりコピペしたりして、50件とか大量にバラ撒いて煙幕にする。
これを煙幕特許と呼ぶわけだが、はっきり言って外道のやる事なので業界全体的にウケは良くない。が、こういう煙幕特許が大好きなクズもそれなりに多い。

当業者ではない審査官が分からない程度の嘘っぱち特許をバンバン出して他社の出鼻を挫いてみたり、その方面の研究を妨害する事が大好き、というイカれたクズ人間が結構いるのだ。他社の研究を阻害するための特許戦略自体は、ごく普通に行われる事なので、それ自体は問題ではない。が、嘘っぱちを並べて妨害するのは別である。
当業者から見れば本当にいい迷惑だ。こんなの出来るわけないだろ!と怒鳴りたくなるような内容の煙幕特許で、自身のまともな発明の特願が進歩性を理由に拒絶された、なんて事になれば怒りもひとしおだ。

これは、発明そのものでなく思想を特許とする、という特許法のあり方に対する弊害だろうと私は思う。

特許分析の対抗策

なお煙幕特許を出す目的はこれだけではなく、競合他社が必ずやってるだろう特許分類検索での多変量解析、例えば共起ネットワーク図なんか書かれて媒介中心を割り出されたりしないように、という目的で煙幕特許を使う場合もある。最近はこっちのほうが多いかも知れない。先に述べた目的の煙幕特許と比べると幾分マシではあるが、うざいことに変わりはない。共起での媒介中心というのは多くの場合、その企業の技術においてのコアコンピタンスであり、他社や投資家に気づかれたくない核の部分でもあるため、小さな企業(と言っても最低規模で3000人くらいの大企業以上での話だが)であればあるほど隠したがる、ということに一定の理解は示すが。

余談だが、明細書の書き方は大手メーカーであれば、研究者・開発者は年次研修で誰しも経験することである。たいていの人は、思想に落とし込まなければならない請求範囲の書式にウンザリする。慣れてしまえば連想ゲームのようでもあり、それなりに面白くもあるが。